ナズナ

眠れなくなってしまったので何となく、大学でしていることについてでも書いてみようと思う。

 

僕は今大学で根っこの研究をしている。
もっと言うと根っこに関わる遺伝子の研究をしている。

 

本職の人には雑だと怒られるかもしれないが、
ものすごくざっくりと、やっていることを説明しようと思う。

 

 

植物に紫外線をあてて育てていると、遺伝子が傷ついて、中にはおかしくなる個体が出てくる。

 

「根っこが出ない」という「おかしさ」を持った個体に注目して
「どの遺伝子が壊れて、根っこが出なくなっているのか」
をまあ色々な実験で調べていく。

 

その遺伝子を特定できたとしよう。
仮に遺伝子Aと名付けてみる。

 

「遺伝子Aが壊れてしまうと根っこが出なくなる。
ということはAは根っこの形成において重要な役割を持っているのだ」

と分かる。

 

 

論文を完成させることをゴールとした場合、
大体ここまでが研究の1/4ぐらいだろうか。

 

残りの3/4は
「じゃあ遺伝子Aはどのように根っこの形成を
制御しているのか」
を調べることになる。

 

何にでもなれるポテンシャルを持った細胞が根っこになるまでには色々な過程があり、
その中でどの経路のどの部分で遺伝子Aが効果を発揮しているのか、を調べるのだ。

 

 

その辺りについて書くときりがない(根っこの研究、というとニッチなものに思われるかもしれないが過去の知見はたくさんある、
もちろん分かっていないことも多い、両方ある)し、
僕自身勉強できていない部分が多いので割愛する。

 

 

面白いのは遺伝子は冗長性というものを持っている場合が少なくない、ということだ。
要は同じ機能を持った遺伝子が複数存在している、ということで

1つの遺伝子が壊れていても、同じ機能を持った別の遺伝子が代わりに働くことで正常に育ったりする。

 

 

また、「根っこにならない細胞」では「根っこになってしまうのを抑える遺伝子(Bとする)」が働いているので、遺伝子Aが壊れた植物に対して「遺伝子Bも壊してやる」といった操作を行うと正常に根っこが出てきたりする。

 

遺伝子の壊れ具合によってもどんな風に育つかが変わってきたりする。

 

 

根っこひとつ取っても、それが出てくるまでに多くの遺伝子やらタンパク質やらの振る舞いが複雑に関わっているのだ。

 

 

修士の2年間で明らかにできるのはそんな複雑なネットワークのうち、たったひとつの経路のごく一部でしかなかったりする。それすら叶わない可能性だってある。

 

「何の意味があるの?」

というのはよく聞かれることだし、それを自分に問うことでつらくなることもあった。

 

最近はない。それがいい状態なのかどうかは分からない。
どうしてそれについて悩むことがなくなったのかも分からない。

 

時間が解決した、と言えるかもしれない。
あるいは忙しさや他の悩みに紛れてしまったのかもしれない。

 

 

 

ここまで書いたところでどう締めようか迷ってしまう。
こうすることで悩みが解決した、というのもないし、
1つの幹細胞が根っこの細胞になるまでの過程を人生になぞらえるのもちょっと気がひける。

国が出す研究費がどうとか言えるほど実情に詳しいわけでもない。

 

 

とにかく大学ではそんなことをしているという話。

何となく、ある人のブログを読んでいると書きたくなった。
完全に自己満足の文章だけど
誰かにとっての何かになっていれば嬉しい。